kurohone’s diary

色々チャレンジしたい看護師

【国立病院やめてみて思うこと】いい意味でも悪い意味でも分岐した人生②

 前回の続きです。

 

【国立病院やめてみて思うこと】いい意味でも悪い意味でも分岐した人生① - kurohone’s diary

 

 

さあ、いとも簡単に国立病院を辞めると決めてしまった僕はしばらくは悠々と暮らしていた。

 

そのころYouTubeでの動画づくりも出来ることが増え始め、楽しく毎日を過ごしていた。

 

 

ただ、再生数もチャンネル登録者数もぜーんぜん伸びなかった。

 

 

そのときはただ動画を作って、公開するっていうこと自体が楽しかった。

 

「職場が変わって時間が取れるようになったら、どんな動画を作ろう…」

日々ニヤニヤしながらもはや消化試合ともいえるような国立病院での日々であった。

 

 

しかし…

 

 

次第に、職場の仲間たちに「辞めるんだー」と話すようになると、当然ながら「もったいない」と言われる。

そりゃそうだ。10年といえば、そこからが公務員のうま味がやっと出るというタイミングだ。

最初こそ、いーのいーの、退職金なんか考えてたら人生終わっちまうよ。

 

そんな風に言えていた。

 

 

でも、退職の日が近づくにつれて実感してくるものがあった。

 

 

失うもの。

 

この転職で失うもの。

 

それまではこの規則だらけの世界から解放される、という感覚だった。

でも。もうそろそろ「逃げ切れる」となったとき…

 

 

不思議なものだ。人間何かが終わるときにはとても記憶が美化される。

 

 

そうか…俺もう国立病院の看護師さんじゃなくなるのか…

 

 

実感した。当たり前だが、そう思った。

今までのキャリアも。病院内の様々な知り合いも。看護技術はともかく、そこで効率よく働くために自分で気づいてきたノウハウも…。

 

 

 

 

 

 

 

リセット!★

 

 

 

 

 

 

 

 

怖い!!!!

怖い怖い怖い!

なにこれ怖い!また新人さん??10年看護師やって、もう完全に中堅だったのに!

ほんとに??そういうこと??

 

 

…何を書いてるかわからないかもしれないが、起こったことをありのままに書くぜ。

 

 

辞める2か月前くらになって急にそんな感情が巻き起こったのだ。

嘘でしょ?え、なにそんな簡単に決めてんの?

いや、YouTubeとかそんなんで収入になるわけないじゃん!?

もう30歳超えてるじゃん?バカなの?え、バカなの??

俺看護師じゃん、そんなんできっこないじゃん!?

公務員でもなくなるんでしょ?え?せっかく10年やったのに?

もったいなくね?もったいなくね?退職金ももうもらっちゃうよ?

自己都合でもらっちゃうんだよ???

 

 

書いてて涙がでそうだが、マジだ。マジな話だった。

初めて自分の状況を冷静に俯瞰したのだ。

 

 

もうアホとしか言いようがない。

 

 

そこからは恐怖の鬱状態にシフトしていく。

 

 

寝ても起きても、自分がしたことが信じられない。

夢から醒めるというのはまさにこういうことなんだろう。

 

むしろ夢なら醒めてほしかった。

別に看護師でなくなるわけでもないのに、まして無職になるわけでもないのだが。

 

不安と恐怖が渦巻いて、心臓がバクバクした。

職場の仲間に転職の話をされると、冷や汗が出て、吐き気がした。

 

なんてことしちゃったんだ…

 

もう遅い。辞表は出した。もう…

 

後悔しても現実は変わらなかった。

 

最悪なことにそのタイミングでインフルエンザにかかった。40度近い熱が出て、心身ともに追い込まれた。

 

 

思い切って師長と妻に相談した。カッコ悪く、わがままで、ひどい話だとわかってはいたが、そのままでは冗談じゃなく死んでしまいそうだった。

なりふり構わず、様々な人に相談した。職場のみんなはそんなアホな話も真剣に聞いてくれた。

精神科の先生にもカウンセリングを受けた。

 

 

さんざみっともなくジタバタしたが…たくさんの方の意見を聞いた上で、辞表で示したとおり辞めることになった。

 

 

 

もう書くのやめていいかな…

 

 

自分で撒いた種に苦悩しつつも、みんなの励ましもあり、心が少し落ち着いたので、辞める時はなんとか平常心を保ち、挨拶することができた。

本当にあの時関わった方々には頭が上がらない。

 

 

 

そして…自分の看護師人生第2幕とも言うべき某精神科の民間病院での生活が始まった。

 

 

混乱と絶望の序章である。

 

 

 

いろいろな意味でアバウトだった。

 

 

僕は精神科急性期に配属になった。

精神自体は経験のない分野だし、勉強にもなるであろうと、まあそれ自体は良かった。

だが、やはりシステムがアバウトだ。

 

まず看護モジュールが違う。今まで受け持ち式であったのが、機能別看護となったのだ。

簡単にいえば、今までが患者別に担当していた形式だった。

今度のは業務別に仕事を担当するのだ。

 

内服係や点滴係といった具合だ。責任の所在がわかりにくい。

ちっちえーことなんだが、これが効いた。別職種のようだった。

それ以外にもやっぱり患者も違う。精神科の患者さんというのは『話してわかってくれる人』ばかりではない。理屈が通らない。正論が通じない。答えがない。

 

そしてゴールがとてもわかりにくい。

 

 

数字とデータと明確なゴールがあった外科とはぜーんぜん違う!

 

僕を混乱させたのは看護だけではない。給与形態も違うし、休みの取り方も違う。

今までがきっちりしていた分、信じられないことばかりだった…。

 

例えば国立病院では6日連続というのはあり得ない。

どうにかして5日までで調整されるし、祝日もちゃんと振替がある。

しかしながら民間は違う。

6日勤務も普通にある。

民間に勤めている方々には怒られると思うが、僕の中ではこうしたちょっとしたアバウトさというか、独自のルールがそびえ立つギャップとして襲いかかってきたのだ。

 

 

もう自分の常識が通じなかった…

 

そしてまた…鬱になった。

 

 

毎日毎日自分が何のために生きているかわからない。

 

 

自由に楽しく生きようと思ったのに、それどころか何もする気が起きない。

 

 

僕は死ぬ気になれば人間なんでもできる派の人間だったが、生まれて初めて味わった。

『死んだ方が楽なんじゃないか』

 

…精神科にいると、鬱の人がたまに口にする言葉がある。

『消えてしまいたい』

わかる。本当にそうだった。死んでしまいたい、じゃなくて消えてしまいたい。

死ぬことすら迷惑になるから、初めからいなかったことにしてもらいたい。

 

そんな感じだった。

 

一番堪えたのが、娘の小学校の入学式の途中でいてもたってもいられなくなったことだ。

妻に無理なら車に戻ってもいいよ、と言われて車に戻った。

 

本当に辛くて情けなくて、申し訳なくて。

でも車の中で子供たちの写真を見たら、死ぬわけには…死ぬわけには…と最後の理性みたいなやつが僕を食い止めていた。

 

 

 

…あのとき何か弾みがあったら、僕は死んでいたかもしれない。

今もそう思う。

 

 

だから、なんとかその鬱な時期を乗り越えた後も、僕はあの時一回死んだということにしている。

 

 

家族、友人、前の職場、今の職場、周りの助けがあって運良く生き残っただけなのだ。

今の人生は神様がくれたおまけみたいなものなのだ。

 

そう思うと、不思議と現実を受け止めながら、日常を取り戻すことができた。

 

 

この場でみんなに感謝し、そして謝りたい。

本当に迷惑かけてすみませんでした。

そして大袈裟ではなく今生きているのはあのとき心配かけた皆さんのおかげです。

 

 

 

 

さて、めちゃくちゃネガティブなことを書いてしまったが、2019年10月現在も僕はその民間精神科病院で働いている。

 

 

 

そう、もちろん良いところだってたくさんあったのだ。

 

ここからは転職して良かった点を書こうと思う。

 

 

まず一つ、プレッシャーが激減した。

 

そりゃあ真剣に仕事はしているが、まず命の危機に陥る患者さんがほとんどいない。

身体的には比較的元気な方が多いおかげか、急変だ!救急カート! 先生呼んで!心マして!酸素、挿管!呼吸器!…みたいなことはまあない。

 

その分、患者と小一時間向き合って話すことだってできる。

前の職場では考えられないことだ。

 

あとは国立と違って、超過勤務の申請とかも細かくない。というかほとんど超過勤務はない。

ライフスタイル重視な人も多く、定時には皆帰る。(当たり前なんだけど)

 

 

 

そういう意味でも気が楽だ。

簡単に言えばいい加減なのだ。いい加減というのは『いい』『加減』だ。ちょうど良いのだ。

 

 

不要なことはやらない。必要な業務はやる、といった感じ。それ以上でもそれ以下でもない。

だからすっきりしている。

別に国立とか公立をディスっているわけではない。きっちり入念にやるに越したことはない。

 

 

ただ、めちゃくちゃきっちりしなくても意外となんとかやっている病院もたくさんあるんだ、というだけ。個人の感想。

 

 

もう一点の大きなメリット、家にいる時間が増えた。

 

これはでかい。

 

定時に帰れるのだ。前はその日の業務が終わっても委員会だとか、リンクナースだとか、まあ様々な雑務があったが、現在はそういったことも日勤内に取り組む余裕がある。

つまり看護業務+αを勤務内でできてしまう。

だから帰れる。

 

そっれでいて近い。

17:15に業務終了で最速なら17:25くらいには家にいる。

 

17:25!!!!

 

まだ明るい!

 

すごい、これはすごい。

 

一番よかったと思うのは毎日子供たちと戯れる時間がある。

そりゃずっと一緒にいるとうんざりすることもあるけど、やっぱりかわいい。

 

日勤の日でもお風呂上がりにゲームを一緒にしたり、おままごとや動物ごっこしたり、戦いごっこしたり。

貴重な時間だ。

 

 

給料的にもあまり変化はなかったし、これなら悪い条件ではない。

 

 

そんなわけでこうやってブログを書いたり、動画を作ったり、絵を描いたり、挑戦する時間と体力が増えたのだ。

 

これで良かったとは思わない。でも悪かったとも思わない。

これから先どうなるかわからないけど、この転機は間違いなく貴重な体験だったに違いない。

 

 

看護師さんは引く手数多だ。

もし同じように現在転職を考えている人がいて、少しでもその人の参考になれば…

 

こんな恥知らずなエピソードを誰かの役に立てることができたら幸いだ。

 

 

やってみなきゃわからないことだらけ。

前回、今回と、いきなりなんかヘビーな内容になっちゃったけど、次回からは好きなことを気楽に書いていこうと思います。

 

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